Horse Racing Cafe2号店(仮設)

Horse Racing Cafeの2号店(仮設)的なもの

アドマイヤムーンに関して徒然と

 ようやく、ゴドルフィンからのオファーについて正式にオーナーから発表。40億円という金額自体は既に各スポーツ新聞で報じられていた通りだったが、天皇賞・秋への出走という条件が一つ加えられていたのはちょっと驚き。個人的な意見を言わせてもらうと、アドマイヤムーンの移籍自体には非常に微妙な心境である。ドバイデューティフリーを勝ち、豪華メンバーの揃った宝塚記念を完勝。名実共に日本最強馬となったアドマイヤムーンがその後日本で一戦もすることがないということは日本の競馬にとって果たして正しいことなのかどうかと考えざるを得ないのである(そうした意味では天皇賞・秋出走を条件に加えた利一は褒められていいかと)。George Washingtonの生殖能力に異常が判明すると、迷うことなくクラシック候補であったHoly Roman Emperorをスタッドインさせたクールモアの例は特殊だが、それを除いても日本の競馬はまだ欧米ほどビジネスライクになっていないという印象が強い。それに対して、「日本は海外から続々有力馬を輸入しておいて、いざ自分の番となったら放出を拒否するのか」といった声があるかもしれない。ただ、そこで考えるべきは日本が輸入しているのはあくまでも?競走馬を引退し種牡馬になる馬?であり、現役バリバリのトップホースを海外へと放出する今回の例とは全く違う。そして、ただ血を海外に広めるだけであるならばアグネスワールドファルブラヴが英国で供用されたように単年度のリース供用という手段もあるし、広がりは限定的だがシャトル種牡馬もある。
 しかし、このようなオファーは非常に稀な例だということも我々は心に留めておく必要もあるだろう。今回、シェイク・モハメドからオファーがあったからといって今後も頻繁に日本のトップホースにオファーが来るかというとそれには複数の要因から至らないと考える。
 一つ目は、今回の例は近藤利一オーナーも言及しているようにドバイデューティフリーでの勝利が評価されたものであり、国内での成績に対する評価はそこまで高くないのではないかということ。ディープインパクトのように国内であっても飛びぬけた成績を誇る馬は別だが、今回そして前回のユートピアの例からしてもシェイク・モハメドはあくまでも国際舞台(と言うかドバイ)で成績を残した馬にしか今後もオファーを出さない可能性は高い。そうなると、エアシャカールシリウスシンボリのような3歳夏に遠征するローテを選択する馬を除いて、日本馬にオファーが来るのは最短でも3歳暮れの香港後、さらに言うと4歳春のドバイ後となる。これならば、毎年盛り上がるクラシックにおいて有力馬がいきなり輸出されるという事態は想像しなくていい。
 二つ目の要因は、アドマイヤムーンフォーティナイナーの血統だということである。これが、サンデーサイレンス産駒だったら、またアグネスタキオン産駒だったら、果たしてアドマイヤムーンを共有している吉田勝己氏(というか社台グループ)は手放したのだろうか。Funny Cideを始めとして産駒が活躍中のDistorted Humorが2000万以上の種付け料を集めるなど、海外におけるフォーティナイナー系の人気・評判は日本よりも非常に高い。まして、母父サンデーなら割と繁殖を選ばずに種付けできるという魅力もある。そして、ダート適正は未知だが芝である程度計算できるとなると、海外から高額のオファーが来ることも理解できる(というか、天皇賞・秋出走という条件を向こうが受諾したらますますダーレー・ジャパンでの種牡馬入り濃厚だと思うのだが)。
 最後の要因としては、40億円というオファー金額である。ユートピアが400万ドル、そしてInvasorのトレード値は140万ドルである。ウルグアイとは賞金格差が存在するためにやや強引な比較とはいえ、それを踏まえるとアドマイヤムーンの40億円というのは飛びぬけている数字。今後、この例が先例となるのであれば、日本においてアドマイヤムーンクラスを購入するには相当な金額が必要ということになる。それならばいくら種牡馬としての価値を含んでいても南米から購入した方がリスクは少ないし、そもそも日本馬に今後もそんな金額を可能性があるのはシェイク・モハメドくらいだろう。
 こう考えてみると、たとえ今後オファーがあったとしてもユートピアクラスが2年に1頭くらいのペースで買われていくというのが現実なのではなかろうか。今回のオファーから変に島国思考する必要は全くもって必要ない。
 
 以上で勢いで書いた電波終了。寝る。