Horse Racing Cafe2号店(仮設)

Horse Racing Cafeの2号店(仮設)的なもの

「当たり前」という難しさ

 「万全の体調」、さぞ勝負の世界では当たり前であるかのように言われていることだが、これほど難しいことは無いのではないだろうか。先日無事閉幕した北京五輪でも、女子マラソンで2大会連続金メダルの期待を背負っていた野口みずきは直前合宿中の故障のためにスタートラインにすら立つことができなかった。スタートラインへはたどり着いた土佐礼子だが、こちらも合宿中の故障が影響して途中棄権、結果的にゴールラインへたどり着くことはできなかった。
 競馬の世界でも全く同じである。いつだったか本で読んだが、競走馬というのは常にどこかしらに痛いところを抱えており、本当に「万全の状態」でレースに出走できることなどキャリアの中で数戦しかないのだそうだ。どこかしらに不安がありながらも次のレースへ向けて調整されていく、言わば綱渡りのような調整を余儀なくされているのが競走馬なのである。
 また、目指す舞台が大きければ大きいほど、強い負荷を積んだ調教が競走馬に与えられていく。毎年のごとく日本ダービー後に故障馬が続出することもこれに起因すると言われており、言わずと知れた「一生に一度の舞台」へ向けて各厩舎が渾身の仕上げを施した結果、体が十分に完成していない段階で自身のマックスに近い能力を出すことになるため故障してしまうのだ。
 国内ですら文字通り「万全な状態」で出走させることは難しいのに、海外にその舞台を移せばそれがより難しくなるのは言うまでも無いだろう。慣れない環境・いつもと違う調教内容・長時間に渡るフライトなど、どれも繊細なサラブレッドの体調を悪くするには十分すぎる要因である。記憶の新しいところでは、ハーツクライなどは英国遠征でカイ食いを落とし体調が戻りきらないままレースを迎えたし、ディープインパクトは散々新聞・雑誌などのメディア上では「万全」の2文字が踊っていながら、実際はイプラトロピウムを要する状態にあったなど、こうして考えてみると日本馬が海外で本当に不安が無い状態で出走できたことなどないかのようにも感じてしまう。

 で、前置きが長くなってしまったが、どうしていきなりこんなことを思ったかというと今秋に海外遠征をする予定の日本馬2頭と来日予定の外国馬について結構重要なことが今日明らかになったからだったりする。

 ●メイショウサムソン凱旋門直行へ

前哨戦となるフォワ賞・G2(14日、ロンシャン競馬場・芝2400メートル)への出走に関して、「正式に決めるのは今週の競馬が終わって、(自身が)向こうに行ってから」と前置きしたうえで、「使ってどうなるか分からないし、一本で行った方がいいような気もする」とプランを明らかにした。同馬は現地で順調に調整中。週明けに高橋成調教師らが渡仏。状態を確認したうえで、ローテーションを最終決定する。

 まさか、レース1週間前まで前哨戦を使うか使わないかも分からないような綱渡りローテで来るとは・・・。使わないことでほぼ確定らしいが、如何せんお粗末過ぎやしないか、高橋成調教師。

 ●カジノ調整がはかどらない…出国日程に遅れも 

米G1・BCクラシック(10月25日、サンタアニタ競馬場)を目指し、現在は美浦トレセンで調整中のカジノドライヴ(牡3=藤沢和)の出国スケジュールに遅れが生じる可能性が出てきた。カジノは来週中にトレセン近郊のミホ分場に移動。出国検疫を受けた後、16日に渡米する予定だった。だが、思うように調整が進んでおらず出国日程をずらして、もうしばらく厩舎で調整を続ける見込み。このため、前哨戦として有力視されていたグッドウッドS(9月27日、サンタアニタ)への出走は微妙な状況だ。

 こちらは国内での調整遅れ。藤沢調教師曰く2週間は遅れているとのこと。ただ、こちらに関しては既に予定変更が決まっており10月上旬に渡米、一般戦を使ってから中1週で本番に臨むというかなりの強行ローテが決定済み(デイリー馬三郎情報)。かなりのリスクを伴う遠征だけに、現段階で不安があるのならば回避するべきと私は思うのだが、公共放送で「一勝より一生」と言い切った藤沢調教師にしてはかなりの賭けに出た格好。それとも、一度ミッションに失敗しているだけに今度は失敗できないという、山本オーナーから強いプレッシャーが働いていたりするか。いずれにせよ、個人的にはあまり褒められた遠征ではないと感じていることは確か。今年一杯で引退させることでも決めていない限り、一生に一度のダービーとは異なり来年も開催される(しかも同じ競馬場で)BCを獲りに行く必要があるのかなと思わざるを得ない。

 ●Sacred Kingdom gets off to a shaky start 
 スプリンターズSに来日予定のSacred Kingdomだが、行われたバリアトライアルで10頭立ての7番目でゴール。後になって検査をしたところ、挫石が見つかったと。

It's a stone bruise, and I don't believe it will effect his preparation for the Sprinters Stakes in Japan,Yiu said.
I only wanted the horse to have a quiet trial this morning and I instructed Weichong along those lines, so I was not surprised to see him back in the field. But he didn't do a lot in the final stages and my first thought was that the trial was just fair.

 調教師のR.Yiu曰く、「日本遠征には問題ないだろう。バリアトライアルの結果も鞍上に無理させないように事前に言った結果だから驚いてはいない」

"I really don't think it will be a problem. After talking with Bronte, I think the horse will only miss two days work."

 「本当に問題ない。2日運動を控えれば大丈夫」と
 
 問題のSacred Kingdomは16日のバリアトライアルをこなした後、来日予定。うーん、実力は断然なだけに来日したら突っ込もうと思っていたがこれは様子見が賢明かもしれない・・・。