Horse Racing Cafe2号店(仮設)

Horse Racing Cafeの2号店(仮設)的なもの

Urban Seaの軌跡(後編)

 世界の合田がこんな記事を書いてくれましたので、もう私が書くまでも無いかなーとも。ただ、一応乗りかけた船なので多少重複する箇所があるかとは思われますが簡単にUrban Seaの仔について書いておこう。ちなみに、まとめるのが下手で本当は先週中にうpする予定だったのに延びてしまったのは内緒である。

Urban Ocean (1996 c by Bering)

 前回の記事にも書いたように、Urban SeaコロネーションC後に故障を発生。現役時代のオーナーでもあるDavid Tsui氏所有のまま繁殖入りとなった。そして、翌95年にBeringを種付けされると、96年に栗毛の牡馬を無事に出産している。
 Urban Oceanと名付けられた栗毛の牡馬は母親同様にDavid Tsui氏がオーナーとなり、愛国のA.O'Brien厩舎所属となった。当時、A.O'Brienは障害競走の調教師から平地調教師へと転進してまだ数年。だが、若干28歳にもかかわらず既にDesert KingやKing of Kingsなどで十分な実績を挙げており、Urban Oceanの同期にも愛2000ギニーを勝つSaffron Waldenがいる。
 2歳7月、距離1マイルのメイドンでUrban Oceanはデビューを迎えると、デビュー戦を難なく勝利。だが、その後の3戦は勝ち星に恵まれることなく2歳シーズンは4戦1勝という成績で終えている。
 3歳となり初戦を見事に勝利したUrban OceanはガリニュールS(愛GⅢ)へと駒を進めた。その後サンファンカスピラーノH(米GⅠ)を勝つSunshine Streetやらこの年の愛チャンピオンSDaylamiの2着*1となるDazzling Parkなどなかなか骨っぽいメンバーが揃っていたが、それらを退けて初重賞制覇を見事に達成。愛2000ギニーを制したSaffron Waldenに続けとばかりに名門厩舎からクラシック候補の誕生となった。しかし、この勝利で勢いに乗るかと思われたUrban Oceanだがこの重賞制覇が自身のキャリアハイであり、その後の勝ち鞍はリステッドで挙げた1勝のみに終わっている。ガリニュールS後に出走した愛ダービーMontjeuの前に完敗の6着。1年近い休養明けとなったリステッドこそ勝ったが、続くタタソールズゴールドC(愛GⅠ)はMontejuが力の違いを見せ付ける中で7馬身離された最下位。その後も再び1年近い休養を余儀なくされるなど、必ずしも4歳以降のUrban Oceanはその力を十分発揮できたとは言い難い競走生活であった。
 01年秋に通算成績14戦1勝で現役引退。同年に弟のGalileoが大活躍するなど血統面を期待されてか種牡馬入りを果たす。現在は愛国のKilbarry Lodge Studで供用。まだ、上級レースで活躍する産駒は出ていない模様。

Melikah (1997 f By Lammtarra)

 ラムタラの初年度産駒にして最高傑作と評されるのが言わずと知れたMelikahである。今にして思えば、Sadler's Wellsをつけて英ダービーを勝つよりもラムタラ産駒でクラシックレース連体を果たすことのほうがずっと難しいミッションのようにも感じられてしまう。そういう意味では、繁殖牝馬としてのUrban Seaの評価をグッと高めたのはMelikahであり、日本に来てからのラムタラ産駒であるとも言えるか。
 イヤリングセールで1000万フランという仏せりレコードでGainsborough Studに落札されたMelikahはGodolphinのロイヤルブルーの勝負服を背に3歳春にデビューを迎えた。いきなり準重賞のプリティポリーSへの出走であったが、そこをあっさりと勝つと陣営が2戦目に選択したのは英オークスであった。父同様に2戦目にして最高峰への挑戦となったのである。そもそもこの世代の牝馬は挙げるには片手では足りないほど強豪牝馬が揃っていた世代。その中で僅かキャリア1戦のMelikahが果たしてどこまで戦えるのか期待よりも不安が強いものであった。だが、Melikahは勝ち馬のLove Divineにこそ完敗であったが2着Kalypso Katieとはクビ差。また2番人気にであったPetrushkaには先着する3着とキャリア1戦の馬としては文句無い走りを見せたのである。 その後、1番人気に推された愛オークスでは人気を裏切った英オークスのリベンジに燃えるPetrushkaに屈し2着。夏を越して出走したヴェルメイユ賞はVolvoretaの5着に敗れ、そのレースを最後に引退となった。
 現役を引退後はGainsboroughにて繁殖入り。これまでにターフに送り出した仔は3頭。その中でもSheikh Mohammedがオーナーであり、A.Fabreが調教するValedictoryなどは昨年のデビュー戦の勝ち方が良かったためにクラシック候補として注目されていたが今シーズンはまだ出走なし。

Galileo(1998 c by Sadler's Wells)

 この馬については今更私がどうのこうの言う必要も無いであろう。その競走成績・種牡馬成績ももちろんだが、Sadler's Wells、A.O'Brienという歴史的にみても稀有な存在といえる1頭と1人に英ダービーのタイトルを初めてプレゼントした馬ということでも歴史に名を刻んだ。

Black Sam Bellamy (1999 c by Sadler's Wells)

 偉大すぎる全兄のために苦労を強いられる良血馬は多い。周囲の期待が高すぎるがゆえに、どうしてもその成績に対する評価は辛いものとなってしまうのだ。だが、Black Sam Bellamyはそんな周囲のプレッシャーに負けることなくGⅠを2勝した。日本における同じような例、ナリタブライアンビワタケヒデディープインパクトオンファイアとは比べることが憚られるほどの賢弟であったのがUrban Seaが99年に産んだBlack Sam Bellamyである。
 Black Sam Bellamyは2歳10月のニューマーケットでの1マイル戦で初陣を迎えている。騎手は兄の主戦でもあったM Kinane、調教師も兄同様にA.O'Brien、オーナーすらも兄の共同所有者の1人であったMichael Tabor。毛色も父も同じ1頭の2歳馬に対して多くの人がスーパースターGalileoの姿を重ねていたことだろう。だが、デビューからどのレースも危なげなく無敗で突っ走った兄に対して、Black Sam Bellamyは2歳時3戦するも3着2回が最高着順。初勝利はシーズンが変わり、4月まで待たされることになる。
 その後も勝てない日々は続く。英ダービー戦線は僚馬のHigh Chaparralに任せ、仏ダービー路線に赴くも前哨戦のオカール賞(仏GⅡ)は3着、本番仏ダービー5着とそこそこの競馬はするものの勝てない。そんなBlack Sam Bellamyの待望の2勝目にして素質開花となったレースが凱旋門賞10着後に出走したジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)であった。2着Guadalupeとは僅かに短クビ差。非常に危うい勝利ではあったが、ついにGⅠタイトルを勝ち取ったBlack Sam Bellamyは翌年もタタソールズゴールドC(愛GⅠ)を2番手から抜け出して2着に8馬身差の楽勝。ついに…ついに良血開花かとその後のさらなる飛躍も期待されたが、その後は残念ながら勝ち星に恵まれることなく2連覇を目指したジョッキークラブ大賞も4着。そのレースを最後にターフを去ることとなった。
 現役を引退後はドイツで種牡馬入り。再び全兄と比べられるようになるのは辛いだろうが、Black Sam Bellamyも昨年の独セントレジャー勝ち馬を輩出。種牡馬としても偉大すぎる兄に何とかして喰らい付こうと、Black Sam Bellamy自身も着実に実績を積み上げつつある。

Atticus (2000 c by Sadler's Wells)

 この馬もGalileoと同じプロフィールをもつ馬だが、残念ながら未出走。

All Too Beautiful (2001 f by Sadler's Wells)

 4年連続Sadler's Wells産駒であるが、この馬も走るのだから本当に恐るべしUrban Seaである。デビュー2連勝で迎えた英オークス、All Too Beautifulは1番人気に推された。この馬を支持した誰もが、全兄Galileoに続くきょうだいでの英ダービー英オークス制覇という偉業達成、そしてこのレースをステップとしてAll Too Beautifulが名牝への道を歩みだすことを期待していたことであろう。
 確かに、このレースの勝者は後に歴史的名牝と称されることになる馬であった。だが、その馬の名はAll Too Beautifulではない。All Too Beautifulの遥か7馬身前に1頭。その馬の名はOuija Board。史上初のカルティエ賞年度代表馬2度受賞となる名牝の初タイトルはこのレースであった。
 続く愛オークスOuija BoardはPunctilious以下に完勝し、雪辱を狙ったAll Too Beautifulは4着。一息入れて出走したべレスフォードS(愛GⅡ)も4着に敗れたAll Too Beautifulは翌年のミドルトンS(英GⅢ)で初重賞制覇を達成したが、そのレースが結局ラストランとなっている。
 引退後は今年2歳になるGiant's Causewayと1歳になるKingmanboの仔がおり、どちらも牝馬

My Typhoon (2002 f by Giant's Causeway)

 Urban Seaが産んだこれまでの産駒は1頭を除いて欧州で競走生活をスタートさせている。その中にあって唯一米で競走生活を送ったのがMy Typhoonである。
 彼女が米で競走生活を送るきっかけになったのは2002年のタタソールズディセンバーセール。せりの目玉として上場されたUrban SeaとGiant's Causewayの間に生まれた牝馬がLive Oak Plantationのエージェントに約290万ドルにて落札された時にその運命は決まったと言えるのだろう。
 米に渡った仔馬はCigarを管理したことでも知られるBill Mott調教師の下で芝のデビュー戦を勝利。その血統に恥じない素質を見せ付けたのである。その後も順調に進むかのように見えた彼女のキャリアだが、ステークス勝ちこそ3戦目であっさりと達成したものの、グレードレース勝ちは3歳末のミセスリヴェラS(米GⅡ)まで待たされることになった。
 4歳時もグレードレースこそ2勝はしたが肝心のGⅠでは善戦止まり。姉の雪辱戦ともなるOuija Boardと激突したBCフィリー&メアターフにおいても6着。この敗北も踏まえ、Live Oak Plantationの代表であるCharlotte C.Weberは一度My Typhoonの引退を決めたという。だが、これに異議を唱えたのが調教師のBill Mottであった。Bill Mottは「この馬はもっと良いレースができる」とWeberを説き伏せ、My Typhoonは5歳シーズンも現役続行となった。
 GⅠ制覇に向けて事実上のラストチャンスとなるシーズン、My Typhoonは調教師の言葉通り強くなってターフに戻ってきた。シーズン初戦こそ3着に敗れたが、続くGⅢを勝つとジャストアゲーム(米GⅡ)では強豪Wait A Whileを撃破。これ以上ないほどの充実期を迎えてのダイアナS(米GⅠ)挑戦となったのだ。
 レースは道中2番手追走から、3コーナーから4コーナーにかけて一気に先頭を奪うと、そのままゴールまで押し切るといった横綱相撲。My Typhoonはこれ以上無いほどの完璧なレース振りで念願のGⅠタイトルを獲得したのだ。だが、その後の競走生活はダイアナSで燃え尽きてしまったかのように低迷に入ってしまう。挑戦したBCマイルも最下位に敗れ、そのレースをラストランとして繁殖入りとなった。
 現役引退後はオーナーの所有するLive Oak Plantationで繁殖入り。今年、Awesome Againを父に持つ牡馬を出産したとのこと。

Cherry Hinton (2003 f by Green Desert)

 生涯成績5戦0勝。Urban Seaの仔にしてみれば失敗の烙印を押されてしまってもおかしくはない成績だが、中身はGⅢ2着、英オークス5着などがありなかなか濃いものとなっている。父Green Desertなんだから距離短縮すればあわよくば…的な感じだったコロネーションS(英GⅠ)でブービーに負けているあたり、母系の影響が強かったのか。何かSea the Stars距離延長無問題説もこの馬を念頭に置かれているような気もしてきた。

Sea's Legacy (2004 f by Green Desert)

 J.Oxx厩舎所属だったが、wikiによると昨年のタタソールズセールで10000万ギニーで売却されたと。その後、上記の世界の合田コラムによるとカタールに輸出されたとのこと。

Sea the Stars (2006 c by Cape Cross)

 Green Desert産駒の2頭がUrban Seaにしては今一つの成績であったために、Sea the StarsGreen Desertの仔であるCape Crossに父が変わってどうかと思われたが、知ってのとおり2000ギニー制覇。再びUrban Seaに光を当てることに成功した。
 考えてみればこの馬、昨年のデビュー戦をこのブログで少し取り上げていたりする(出世レース)。この時はSea the Starsのデビュー戦となったメイドンの前2年の勝ち馬がTeofilo、New Approachということもあり取り上げたのだが、結果的に勝ち馬ではなかったものの昨年の同レースからも出世馬が誕生。ちなみにこのメイドンでSea the Starsは現時点で唯一の敗戦となる4着だったが、この時の2、3着は先日のダンテSでワンツーを決めたBlack Bear IslandとFreemantle。後の英ダービー人気上位馬3頭が出走していたことになる。

no name (2009 c by Invincible Spirit)

 Sea the Starsを産んだ後は不受胎が続いたUrban Sea。最後の産駒となったのはInvincible Spiritの牡馬であった。Invincible SpiritSea the Starsの父同様にGreen Desert産駒で現役時代はスプリントCを制している。種牡馬としては06年に2歳勝ちあがり頭数のレコードを樹立する*2など、そのスピードと仕上がりの早さが魅力の種牡馬であり、Sheikh Mohammedがその権利を購入したことでも知られている。代表産駒は今のところFleeting Spiritか。

*1:9馬身離された2着だけれど。でも、Dream WellやらRoyal Anthemには先着

*2:元記録保持馬はエンドスウィープファスリエフ。今はInvincible Spiritの記録もChapel Royalに破られている