Horse Racing Cafe2号店(仮設)

Horse Racing Cafeの2号店(仮設)的なもの

名牝たちの通知表

  j;;;;;j,. ---一、 `  ―--‐、_ l;;;;;;   
 {;;;;;;ゝ T辷iフ i    f'辷jァ  !i;;;;;    名牝の仔は走らない… 
  ヾ;;;ハ    ノ       .::!lリ;;r゙  
   `Z;i   〈.,_..,.      ノ;;;;;;;;>  そんなふうに考えていた時期が
   ,;ぇハ、 、_,.ー-、_',.    ,f゙: Y;;f     私にもありました
   ~''戈ヽ   `二´    r'´:::. `! 

 インターネットで公開されたスタリオンブックを見ながらニヤニヤしていると、ふと1つの競馬に関する格言が頭を過ぎる。「名牝の仔は走らない」、今となってはまさに死語となってしまったような格言の1つだが、本当に死語扱いされるほど名牝の仔って走っているのだろうか?一度気になったら仕方が無い性質なのでテスト勉強から現実逃避する意味も含めて阪神JF桜花賞オークス秋華賞エリザベス女王杯の勝ち馬こそ「名牝」であると勝手にこちらで定義、そして90年以降の該当レース勝ち馬について産駒の活躍を調べて表にしてみた。

表を見るときの良い子の約束4か条
1.データはnetkeibaで検索したので08年産は含まれていません
2.勝馬数は中央競馬で勝ち鞍を挙げた産駒の数字です
3.主な産駒欄にはOP特別勝ち、もしくは重賞3着以内を記載
4.08年種付け種牡馬はスタリオンブックを参考にしています。受胎したかどうかまでは存じ上げませんでご注意を

桜花賞

勝ち馬 産駒数 勝馬 主な産駒 08年種付け種牡馬
90 アグネスフローラ 8 5 アグネスフライトアグネスタキオン 05年死亡
91 シスタートウショウ 8 4 特になし 種付けせず
92 ニシノフラワー 9 7 ニシノセイリュウニシノマナムスメ 驀進王→タニノギムレット
93 ベガ 5 4 アドマイヤベガアドマイヤボス 06年死亡
94 オグリローマン 8 3 特になし トワイニング
95 ワンダーパヒューム 0 0 産駒なし 96年死亡
96 ファイトガリバー 7 4 特になし アグネスタキオン
97 キョウエイマーチ 4 1 特になし 07年死亡
98 ファレノプシス 6 1 特になし 金亀→アグネスタキオン
99 プリモディーネ 3 1 特になし 米国で繁殖生活
00 チアズグレイス 3 2 特になし キングカメハメハ
01 テイエムオーシャン 1 0 産駒未デビュー テイエムオペラオー
02 アローキャリー 2 2 特になし 06年死亡
03 スティルインラブ 1 0 産駒未デビュー 07年死亡
04 ダンスインザムード 1 0 産駒未デビュー シンボリクリスエス
05 ラインクラフト 0 0 産駒なし 06年死亡

秋華賞

勝ち馬 産駒数 勝馬 主な産駒 08年種付け種牡馬
96 ファビラスラフイン 8 5 特になし シンボリクリスエス
97 メジロドーベル 5 1 特になし シンボリクリスエス
98 ファレノプシス 6 1 特になし 金亀→アグネスタキオン
99 ブゼンキャンドル 5 1 特になし アグネスタキオン
00 ティコティコタック 3 1 特になし ネオユニヴァースマンハッタンカフェ
01 テイエムオーシャン 1 0 産駒未デビュー テイエムオペラオー
02 ファインモーション 0 0 産駒なし 不受胎
03 スティルインラブ 1 0 産駒未デビュー 07年死亡
04 スイープトウショウ 0 0 産駒なし アグネスタキオン
05 エアメサイア 1 0 産駒未デビュー キングカメハメハ

エリザベス女王杯

勝ち馬 産駒数 勝馬 主な産駒 08年種付け種牡馬
90 キョウエイタップ 8 1 特になし タヤスツヨシ
91 リンデンリリー 11 4 ヤマカツリリー 08年死亡
92 タケノベルベット 10 1 特になし ステイゴールド
93 ホクトベガ 0 0 産駒なし 97年砂漠に散る
94 ヒシアマゾン 4 1 特になし 米国で繁殖生活
95 サクラキャンドル 7 1 特になし サクラプレジデント
96 ダンスパートナー 6 3 特になし シンボリクリスエス
97 エリモシック 6 2 特になし アドマイヤムーン
98 メジロドーベル 5 1 特になし シンボリクリスエス
99 メジロドーベル 5 1 特になし シンボリクリスエス
00 ファレノプシス 6 1 特になし 金亀→アグネスタキオン
01 トゥザヴィクトリー 4 0 特になし シンボリクリスエス
02 ファインモーション 0 0 産駒なし 不受胎
03 アドマイヤグルーヴ 2 0 産駒未デビュー シンボリクリスエス
04 アドマイヤグルーヴ 2 0 産駒未デビュー シンボリクリスエス
05 スイープトウショウ 0 0 産駒なし アグネスタキオン
06 フサイチパンドラ 0 0 産駒なし シンボリクリスエス

 
 重複馬と産駒を残すことが出来なかった3頭、そしてまだ産駒がデビュー前の11頭を除くと対象は40頭になる。その中でGⅠ勝ち馬を出したのはアグネスフローラ・ベガ・エアグルーヴビワハイジの4頭と確立にしてちょうど10%になった。GⅠ勝ち馬を出した繁殖牝馬が全部社台グループの牧場で繋用されている馬になってしまったのはある意味予想通りと言えるか。そして、重賞勝ち馬を出した繁殖牝馬にその枠を広げると7頭。確立にして17.5%。これを高いと考えるか低いと考えるかは他の類似的な統計(例えば上記のGⅠ2着馬の繁殖結果とか)を取っていないので全く分からないが、少なくとも未勝利や条件レベルで競走生活を終えた牝馬が重賞競走を勝つ産駒を出す確立よりもずっと良い数字であることは間違いないだろうし、考えていたよりは決して悪くはない数字と言ってもよいのではないだろうか。
 と、作った表をニヤニヤ見ているとここ数年はブルードメアサイヤーとしても存在感が増しつつあるサンデーサイレンス産駒の牝馬GⅠ勝ち馬の繁殖成績がイマイチのように思えてくる。何故だろうか。こうなると気になって仕方がない性質なのでまずは母父サンデーサイレンスでGⅠを勝った馬を並べてみる(レース欄は初めて勝ったGⅠ)

レース名 馬名 母名 母の競走成績
05桜花賞 ラインクラフト マストビーラヴド 3戦0勝
05朝日杯FS フサイチリシャール フサイチエアデール GⅠ2着3回、重賞4勝
06菊花賞 ソングオブウインド メモリアルサマー 10戦2勝
07シンガポール航空国際C シャドウゲイト ファビラスターン 中央19戦1勝
07宝塚記念 アドマイヤムーン マイケイティーズ 未出走
07菊花賞 アサクサキングス クルーピアスター 28戦6勝
07JCD ヴァーミリアン スカーレットレディ 16戦1勝
07阪神JF トールポピー アドマイヤサンデー 8戦3勝、GⅡ2着1回
08桜花賞 レジネッタ アスペンリーフ 4戦1勝
08JDD サクセスブロッケン サクセスビューティ GⅡ1勝
08JC スクリーンヒーロー ランニングヒロイン 2戦0勝
08朝日杯FS セイウンワンダー セイウンクノイチ 8戦0勝

 こうして見てみると、フサイチエアデールサクセスビューティなど重賞勝ち馬の名前はあるが、意外と現役時代は下級条件で終わっていた牝馬の産駒が多いことに気付かされる。では試しに他の種牡馬と比較してみたらどうなんだということで、次はサンデーサイレンス同様に種牡馬としての実績も十分、母父としても優秀なトニービンで同じように母父トニービンのGⅠ勝利馬を並べてみると…

レース名 馬名 母名 母の競走成績
99日本ダービー アドマイヤベガ ベガ 牝馬二冠
01朝日杯FS アドマイヤドン ベガ 牝馬二冠
03JDD ビッグウルフ ビッグモンロー OP勝利
03エリザベス女王杯 アドマイヤグルーヴ エアグルーヴ オークス天皇賞・秋
05有馬記念 ハーツクライ アイリッシュダンス 重賞2勝
07皐月賞 ヴィクトリー グレースアドマイヤ GⅢ2着1回
08皐月賞 キャプテントゥーレ エアトゥーレ GⅡ1勝、仏GⅠ2着1回

 と、こちらは全体的に母の競走成績と仔の競走成績がリンクしているということがよく分かる(しかもどの母馬も初仔〜2番仔である程度の結果を出している)。現にGⅠを勝ったトニービン産駒の牝馬は全部で4頭いるが、ベガとエアグルーヴの繁殖成績は今更言うまでもなく、他の2頭であるノースフライトもミスキャストでOP勝ちを果たしているほか、レディパステルはロードバロック、ロードロックスターとなかなか素質のありそうな産駒を送り出している。
 ちなみに、サンデーサイレンスに15年間死守してきたBMSリーディングの座をついに奪われたノーザンテーストにしても産駒でGⅠ(GⅠ級)のレースを勝利した牝馬は4頭いるが競走中の事故で仔を残すことが出来なかったシャダイソフィアを除き、シャダイアイバーダイナカールアドラーブル全てが上級レースで活躍した産駒を送り出しているのだ。
 では、GⅠ勝ちのあるサンデーサイレンス産駒牝馬の繁殖実績はどうなんだということで、上記の表よりも少し代表産駒欄を詳しくした形で並べてみると…

レース名 馬名 産駒数 勝馬 代表産駒
95オークス ダンスパートナー 6 3 ドリームパートナー(中央4勝)
98阪神牝馬S スティンガー 4 0 スコルピオンキッス(地方5勝)
00桜花賞 チアズグレイス 3 2 チアズガディス(中央1勝)
01エリザベス女王杯 トゥザヴィクトリー 4 0 アゲヒバリ(地方4勝)
02スプリンターズS ビリーヴ 2 1 ファリダット(OP勝利)
02阪神JF ピースオブワールド 2 0 ラブアンドピース(中央未勝利)

 と、ダンスパートナーなどは上記のドリームパートナー以外にもロイヤルパートナーが中央3勝、ダンスオールナイトも中央4勝となかなか悪くはない産駒成績なのだが、全体的にトニービンノーザンテースト産駒のGⅠ勝利牝馬や、上の母父サンデーサイレンスでGⅠ勝ちを果たした競走馬の母馬の競走成績と比較して考えた場合、現時点で期待に十分応えているとはあまり言えないのではなかろうか(もちろん、競走年齢に達した産駒のサンプル数がまだ少ないということもあるが)。
 どうして、トニービンサンデーサイレンスの間でこうも大きな違いが出たのであろう。もちろん、上に挙げたトニービン牝馬はどれもが歴史上屈指の名牝であり、それぞれが優秀な能力を持っていたということも考慮しなければならないだろう。だが、一番の大きな違いはトニービン牝馬サンデーサイレンスを大将格とするサンデーサイレンス系の種牡馬と種付けすることが出来た点にあると考えて間違いないだろう。現に、上記のベガ・エアグルーヴアイリッシュダンスにしても産駒のGⅠ勝ちはサンデーサイレンス産駒で達成されたもの、去年の皐月賞を逃げ切ったキャプテントゥーレアグネスタキオン産駒とこちらはサンデーサイレンスの孫にあたる。つまり、現役時代はサンデーサイレンス産駒に勝利を攫われた経験もある牝馬たちが、繁殖入りと同時に現役時代は最大の敵だった馬が最大の味方に変わったのだ。反対に、父サンデーサイレンス牝馬たちにとっては最大の味方と言っても過言ではなかった自身の血がある意味で最大の敵に変わってしまったのである。これゆえに母父トニービンの競走馬は母馬の競走成績にリンクする傾向にあり、逆に母父サンデーサイレンスの競走馬は祖父ほどには高いレベルで安定した産駒を送り出せる種牡馬が日本にはまだ欠けているために母の競走成績と自身の競走成績がリンクしづらくなると妄想できるのである。
 2008年のJRAリーディングサイヤーランキングはサンデーサイレンス系の種牡馬がトップ3を占めたように、父には劣るにしても他の種牡馬と比較してもサンデーサイレンス種牡馬はまだ異系の種牡馬よりは勝っている点が多い。特にアグネスタキオンは出走頭数200頭以上の種牡馬の中ではアーニングインデックスが父の2.15に次ぐ1.92と完全に現時点では父の最有力後継種牡馬の座を手にしたといっても過言ではない産駒の活躍であった。サンデーサイレンスがここまで成功した理由として、繁殖牝馬の長所を活かしつつ、自身の長所を産駒に伝えることが出来る(やや抽象的でごめんなさい)点にあると私は考えている。それがゆえに、競走成績が優秀な牝馬は繁殖に上がっても自身の能力を仔により一層遺伝させやすくなったのではないだろうか。今現在、サンデーサイレンス最大の武器であったこの長所を受け継いでいると匂わせる種牡馬アグネスタキオンの他に見つけることが出来ない。桁違いすぎた父を超えることは難しいことかもしれないが、それを割り引いて考えても、歴代のリーディングサイヤーと比べても勝るとも劣らない水準にある種牡馬の産駒を相手にしなければならないのだから、サンデーサイレンスを父に持つ牝馬もかなり大変なのである。
 だが何にせよ、昨今のPOGブームの影響や先日のラジオNIKKEIの中の人の仕事ぶりを見れば分かるように世間には良血好きが多いのが事実。競馬を盛り上げるという意味でも、私たちにとって身近であった牝馬の仔が何世代にも渡って走る姿を見せてくれるに勝る幸せは無いのだから、上記で挙げた牝馬には1頭でも多く私たちを興奮させてくれる産駒をターフに送り出していただきたいものである…。
 本当はメモ程度にしておくつもりだったのに、妙に文が長く、そして迷走しまくったのに若干反省。。