Horse Racing Cafe2号店(仮設)

Horse Racing Cafeの2号店(仮設)的なもの

周回遅れ

 まさかの周回遅れで菊花賞について。
 三冠達成を見届けるべく菊花賞観戦のため京都競馬場に行ってまいりました。とはいいつつ、4月から関西に住まいを移しているので単に隣の県までちょっと足を延ばした程度でございますがね。
 競馬を見始めて早15年。その中で菊花賞に無事辿り着くことができた二冠馬は03年ネオユニヴァース・05年ディープインパクト・06年メイショウサムソンの3頭。秋初戦で春は易々と御したはずの相手に後れを取り、結果的に「二冠馬なれども絶対ではない」というムードをファンや他陣営に植えつけた状態で本番を迎えることとなったネオユニヴァースメイショウサムソンに対して、ディープインパクトの如くライバルとの力の違いを秋始動戦でまざまざと見せつけたオルフェーヴル。その三冠達成は菊花賞前の他陣営から発せられたコメントや単勝支持率58.3%というシンボリルドルフ以上の支持率で迎えたファンの期待に表れている通り、かなり濃厚と考えられていた。唯一懸念材料を挙げるとすれば、やはりそれは他馬ではなく自身の内面。新馬戦1位入線後に池添騎手を振り落した出来事は某国営放送において何度も全国ネットで流されたこともあり今やすっかり有名だが、その新馬戦後もオルフェーヴルはゲートで鳴く、尻尾を振る、レースに集中しようとしない、といった精神面の若さを見せ続けている。その模様は各レース後の池添騎手のコメントからも見て取れる。

2着 オルフェーヴル(池添騎手)
「今日は逃げた馬にうまくペースを作られました。ゲートで鳴いたり、道中も外へ切れようとしたり、まだ幼いところもあります。リングハミの効果もあったし、次に繋がるレースは出来たと思います」
【芙蓉S】(中山)〜ホエールキャプチャ 逃げ切って連勝

10着 オルフェーヴル(池添騎手)
「まだ馬が子供っぽいですね。ゲートの中で鳴いていましたから。スタートは元々速くないのですが、出遅れてから内ラチに張り付いて行こうとしたので、立て直そうとしたらガッチリと噛んで引っ掛かってしまいました。リズムがバラバラになり、直線でも尻尾を振っていました。新潟で新馬勝ちした時のようにリラックスして走ってくれたらいいのですが…。持っている能力はいいモノがあるので、精神的に成長してくれればいいと思います」
 【京王杯2歳S(GII)】(東京)〜グランプリボス 重賞初制覇

2着 オルフェーヴル 池添謙一騎手
「前走は出遅れた後、馬を前に出して行って折り合いを欠きましたので、今日は折り合いを重視して、ゆっくりとレースを運びました。リラックスしたら直線はさすがにいい脚を使ってくれました。今後はもっとリラックスして走れるようになってくれたらいいですね」
【シンザン記念】(京都)〜レッドデイヴィスが早めに抜け出し、初重賞V

3着 オルフェーヴル 池添謙一騎手
「厳しいレースでした。ゲートはこれまでで一番よかったのですが、馬の後ろでも折り合いを欠くぐらいギリギリのレースでした。下りで一気に動いたら、我慢したことが台無しになってしまいますからね。今はひとつひとつ教える段階で、今回のレースもこの馬の実になってくれればと思います」
【きさらぎ賞】(京都)〜トーセンラーがゴール前でとらえ、初重賞V

 新馬戦後、オルフェーヴルは4レースに出走するも残念ながら勝ち星を挙げることは叶わなかった。上述した通りオルフェーヴル自身が持つ精神面の未熟さにその原因の一つがあることは間違いない。生まれつき高い素質を持ちながらも、それをいざレースで100%発揮することができるかどうかは全く別問題。気性・体質といった馬自身の内的要因のほかに、環境・ローテーション・天気といった外的要因まで、それこそ枚挙に暇がないほどの条件がが複雑に絡まりあって一頭の馬の競走成績というものは作られていくのである。どこかで一度そうした歯車が狂ってしまったことによって、素質の高さは万人に認められているにも拘らず、クラシック路線に乗るどころか1勝するのさえやっとであったという競走馬は毎年のように現れる。ともすれば、オルフェーヴル自身も一歩道を間違えればそうした馬達の一頭に数えられることになっても全くおかしくはなかった(現に僕はスプリングSの前までまさにそう思っていた)
 だが何よりもオルフェーヴルの可能性を信じていた陣営はそうしたオルフェーヴルに粘り強く接し続けた。何よりも騎手の池添は根気強くレースを通しての?教育?を行ってきた。レースのたびに池添騎手はオルフェーヴルの持つ課題を指摘、そしてその修正内容についてコメントしているが、ちょっとしたミスによって乗り変わりが行われる近年の競馬界にあってある意味これは異例とも言える。こうした池添の姿勢を全面支援したのが調教師・池江泰寿である。兄ドリームジャーニーとのコンビを通して培われた池添とこの血統への信頼感はたとえ結果が出なくとも揺るぐことはなかった。乗り変わりへの不安がなかったからこそ、池添はレースを通じてオルフェーヴルと向き合い続け、この馬の将来に一番必要なことを教えていくことができたのだ。
 そしてこうした陣営の方針がいよいよ花開いたのがスプリングSであった。

レース後のコメント
1着 オルフェーヴル 池添謙一騎手
「普段の調教とレースで、ひとつひとつ教えてきたことが実を結びました。もともと折り合いが心配な馬でしたが、今日はスムーズにいいリズムで走ることができました。今日はしっかりと結果を出すことができましたし、本番につながるレースができましたので、これからが楽しみです。まだ重賞をひとつ勝ったばかりですから、お兄さんと比較するのはかわいそうですが、これからはドリームジャーニーの弟ではなく、『オルフェーヴル』と呼ばれるようになると思います。本番に向けて順調にいって欲しいですね」
池江泰寿調教師のコメント
「今までやってきたことが実を結びました。レースのレベルが上がった方が競馬もしやすいですし、今日は鞍上も意識的に早めに動いたようですが、まるでドリームジャーニーを見ているようでした。左回りに関しては『京王杯2歳Sの一戦だけでダメと決めつけてはいけない』と鞍上も言っていました」
【スプリングS】(阪神)〜オルフェーヴルが皐月賞に名乗りを上げる

 「馬は一月で変わる」、昔の誰かエロイ人が言っていた気がする言葉を示したスプリングS制覇であり、その後オルフェーヴルはご存じの通りクラシック第一冠目となる皐月賞を圧勝、史上7頭目三冠馬へと階段を上り始めるのである。
 三冠馬となったことにより、これからオルフェーヴルの比較対象は先達三冠馬になることは避けられない。個人的には既に菊花賞の時点で競走馬としてはある種の完成系を示していた先達たちに対し、オルフェーヴルはまだまだ幼いといった感が拭えないかなと。菊花賞後に池添騎手をまたしても振り落した出来事や菊花賞の道中フレールジャックロッカヴェラーノに外から寄られると頭を上げて嫌がるしぐさを見せるなど一時よりは大分マシになったとはいえ改善点を挙げるとするならばまだまだきりがない。
 そしてこちらも比較対象となるであろう兄ドリームジャーニーとの関係を考えたとき、兄最大の弱点でもあった馬格が夏の成長を経て一回り大きくなった時点で斤量泣きに怯える心配もない分、古馬になってもこのまま順調であるならばオルフェーヴルの方が綺麗な成績に収まる可能性が高いかなと。そしてこの全兄弟の関係はアグネスフライトアグネスタキオンの関係にもどこか似ている。まあだからと言って、今年サンデーRで募集され大人気を博したオリエンタルアートの10がアグネスサージャンになるというわけじゃないよという何ともよくわからないオチで久しぶりのエントリ終了。